第50回メフィスト賞受賞作
「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」早坂吝
※解説・感想はネタバレも含みます
最初の1ページ目に
読者への挑戦状として
"犯人当て(フーダニット)でも、トリック当て(ハウダニット)でも、動機当て(ホワイダニット)でもなく、タイトル当てである。"
と、あります。
なかなか無い志向だと思い手に取ることにしました。
総評
大変おもしろかったです。
この本を読むには、「タイトルを当てよう」という考えを持たないで呼んだほうがいいと思いました。
その理由は
ミステリ小説を読む場合、伏線やヒント、ミスリードなどを推理しながら読んでいくか
主人公と同化して、主人公になりきってその世界に飛び込むかだと思います。
この本の場合、主人公の設定がとてもよかったです。
なので、
「タイトルを当てよう」と考えず。余計な推理もせず。
主人公と一緒に物語を進めていったほうが楽しめると思います。
主人公
沖健太郎(26)区役所職員は
普段はおとなしく気弱な「僕」だが、南国モードになった「俺」がおもしろい。
とくに南国モード発動(全裸)になった瞬間の「俺」は見ものです(笑)
沖くんの心の声が、自分の心の声と同調させて読むと、ホント一緒に走り出したい気持ちになるはずです。
人は如何なる場所でも、心も体もすべてむき出しにすることはかなり難しいでしょう。
沖くんは普段、服という仮面によって
服にしばられた体。仮面を付けられた心となっているのでしょう。
だから服をすべて脱ぐ=心の仮面も脱ぐということだと思います。
その心も体もさらけ出した沖くんが、とにかく面白いので
とてもいい主人公キャラ設定です。
動機やトリック、殺害方法や推理編あたりはまあまあでした。
叙述で「全員ヌーディスト」でしたので、それを先読みするには大分むずかしい
ヒントの中で唯一つかめそうだったのが、ビーチで盗撮されたのを、わざわざ船まで泳いで注意しにいくか?ってとこでした。
南国モード沖くんが"沖選手早い早い"などと心の声で叫んだりしてるので、その辺もキャラ設定にごまかされてしまいました。
それに船の若者もワーキャーって叫びすぎなとこも大きなヒントでした。
そりゃ全裸の男がいきなり船に上がってきたら叫びますよね。
まぁアイスピックの持ち出しあたりとか、ビデに睡眠薬とか・・・
そのへんの感想はさておき。
とにかく楽しく読める小説でした。
おすすめです。