【透析災害対策マニュアル】
第 3章 災害時の心得
3.腹膜透析、在宅血液透析の方の心得
腹膜透析(CAPD)を受けている患者さんの場合
1)平常時の心得
・バッグ交換機を充電し、常に使用できるようにしておきましょう。
・緊急持ち出し物品(「第 2章平常時の心得」参照)やお薬手帳を準備しておき、災害時すぐに持ち出せるようにしておきましょう。
・災害時要援護者透析カードを記入し、いつも携帯するようにしましょう。
・災害時の避難経路、避難場所を把握しておきましょう(「第 2章平常時の心得」参照)。
・避難後落ち着いた後に透析用品を取りに帰れる場合に備え、透析用品(透析液バッグ、キット、バッグ交換機、はかり、消毒用品など)や内服薬・インスリンなどを持ち出しやすいように 1ヵ所にまとめておきましょう。
・バッグ交換中や APD施行中の災害時の対処について、どのような対処をするか通院中の透析施設で教わっておき、自分でできるように訓練しておきましょう。
・APD施行中の避難に備え、必要物品(カテーテルクランプ、鋏、バッグ交換機、キットなど)を APDのそばに手の届く範囲に準備をしておきましょう。
・停電時にバッグ交換機が使用できるように、手動モードの使用方法の習得や車のシガーソケットに接続して使用できるインバーターを用意しておきましょう。
・APDのみ施行中の方は、避難所で APDが使用できない場合を想定し、ツインバッグなどの使用方法を習得しておきましょう。
・通院の透析施設、保健所、災害時拠点病院、関連・協力施設、CAPDメーカーの連絡先を把握しておきましょう (「第 2章平常時の心得」参照)。
2) 透析を受けていない時に災害を受けた場合の対応
・自分の身の安全の確保を行い、安全な場所に避難します。
・腹膜カテーテルなどが破損した場合や汚染した場合は、その部より身体側に近い所のカテーテルをストッパーで閉塞するかカテーテルを結び、汚染した透析液が体内に入らないようにします。その後すみやかに通院している透析施設に連絡をとってください。
3) 透析中に災害が起きた時の心得
CAPDの場合
・透析液バッグ交換中で透析が継続できると判断した場合は、情報に気をつけながら治療を継続し、終了した後避難します。
・透析操作を継続しないほうがよいと判断した場合は、以下のいずれかの操作にて透析を中断し、避難します。
*透析液バッグのチューブ 2ヵ所をカテーテルクランプで遮断し、その間を鋏で切断し、避難します。
透析液バッグのチューブ2カ所をクランプで遮断し、間を鋏で切ります
すべてのクランプを閉じます
*透析液バッグとバッグ交換機を抱えて避難します。
・安全な場所に避難後、正しい方法にてバッグ交換を終了します。
APDの場合
・接続チューブと回路のクランプを閉じます。回路を 2ヵ所カテーテルクランプで遮断し、その間を鋏で切断し、避難します。
・避難後正しい方法で切り離しを行います。
すべてのクランプを閉じます
APD回路の2カ所をクランプで遮断し、 間を鋏で切ります
4)避難後の対応
・身体に被害がなければ、透析を行う場所と機材の被害状況を確認しましょう。
・避難所に待機する場合は、自宅玄関前に避難場所を貼付しましょう(CAPDメーカーが配送の時に参考とします)。
・避難所に待機する場合は腹膜透析患者であることを申し出てください。
・落ち着いたら通院している透析施設に連絡をとり、被害状況、避難場所、不足物品、連絡先を伝え、今後の指示を受けましょう。
・通院している透析施設に連絡がとれない時は、保健所、災害時拠点病院、関連・協力施設に連絡をとり、被害状況、避難場所、不足物品、連絡先を伝え、今後の指示を受けましょう。
・PDメーカーにも連絡をとり不足物品の配送の相談をしましょう。
・落ち着いた後、腹膜透析物品に損害がなく治療が継続できる状況であれば、治療を再開します。
・避難所で透析液の加温器が使用できない場合は、下記のような方法をとりましょう。
*インバーターを用いて車のシガーソケットより電源をとり、携帯用加温器を使用する。
*透析液をビニールに入れ、これをお湯につけて温める。
*使い捨てカイロを透析液に貼り付けて温める
(2L液バッグに 8個使用で約 1.5時間で温まります)。
*透析液を抱いて体温で温める。
・手洗いは除菌用ウエットティッシュや手指消毒用スプレーで代用しましょう。
・バッグ交換や出口ケアはなるべく清潔を保てる場所(なければ段ボールなどで周囲を囲うなどをしてほこりなどを避ける)で行いましょう。
・出口の洗浄にはペットボトル飲料水などを代用し、その後消毒をしましょう。
在宅血液透析(HHD)を受けている患者さんの場合
1)平常時の心得
・緊急持ち出し物品(「第 2章平常時の心得」参照)の用意をしておきましょう。
・災害時の避難経路、避難場所を把握しておきましょう(「第 2章平常時の心得」参照)。
・HHD管理施設と災害時(停電時、火災時、地震時、台風・洪水時・警戒宣言時など)の対策を決めておき、訓練をしておきましょう(連絡先、連絡方法、透析中の対応など)。
・HHD管理施設と連絡がとれない時に備え、保健所、災害時拠点病院、関連・協力施設の連絡先を把握しておきましょう(「第 2章平常時の心得」参照)。
・自分の透析条件などを災害時要援護者透析カードに控えておきましょう。
・お薬手帳も緊急時持ち出せるように準備しておきましょう。
・日頃から充分な透析をしておきましょう。
・透析中の災害に備え、止血鉗子、鋏、終了セット、懐中電灯、トランジスタラジオなど緊急離脱ができる物品を透析場所に置いておきましょう。
・透析場所の周囲には倒れてくるような家具や荷物をおかないようにしましょう。
・透析機器、コンソール、ベッドなどのキャスターのストッパーの固定については、HHD管理施設と相談して方針を決めておきましょう。
2)透析をしていない時に災害を受けた場合の対応
・自分の身の安全を確保します。
・避難後は下記のことを行います。
*避難先で透析患者であることを告げます。
*自宅や周囲の状況が落ち着き、水質や装置の安全性が確認されるまでは在宅透析は不可能であるため、HHD管理施設と連絡をとり今後の透析のスケジュールなどを相談しましょう。
*HHD管理施設と連絡をとれない場合は保健所、災害時拠点病院、関連・協力施設などに連絡をとり、今後の透析のスケジュールなどを相談しましょう。
*避難所では食事内容などに注意をして自己管理をしっかりしましょう。
3)透析中に災害が起きた場合の対応
・透析中は回路をしっかり握っておき、災害時に回路が外れないようにしておきましょう。
・災害の種類(停電時、火災時、地震時、台風・洪水時・警戒宣言時など)に応じた方法(HHD管理施設から教わった方法)を行ってください。
・状況を判断し、返血をするか血液回路を切るか判断し、安全に透析を中断します。
・安全な場所に避難します。
・避難をした後に止血・消毒をしてください。
・避難後は上記の“透析をしていない時に災害を受けた場合の対応”と同様にしてください。
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